錬金術師の隠れ家

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ドキドキ!プリキュアの衣装について:プリキュア達とレジーナ

 アニメ―ジュのプリキュア小特集にて、キャラデザの高橋氏のインタヴューが載っていた。レジーナの衣装は「コンセプト的には、ほぼプリキュアの衣装です」という発言があったので、少し気になった。レジーナは体裁上はキングジコチューの娘として、敵側に位置するはずなのに、やたらとマナと(いくらなんでも百合百合しすぎではと思えるくらいに)仲良くなったり、果ては一度は反抗してプリキュア側に寝返ったりする。現在進行形のストーリー展開でも、愛を失い父親のためにプリキュアに敵対しているにもかかわらず、キュアハートはレジーナを「救う」ことを目的の一つとする。単純な勧善懲悪の物語展開ではこんなことまずあり得ないわけで、敵は敵、見方は見方である。ダースベイダーのように寝返ることはあるだろうけれど、とらわれの姫君でもない敵の状態のままの相手を救済する物語なんてあまりお目にかかれない。大体デザイン的にも他のジコチューたちと全然違う(髪の色、耳の羽根、目の色、etc)し、多分伏線かなにかをすでにデザインの段階で仕込んでいるのだろう。ただ展開的だけじゃなくて、この物語の意味内実の解釈においてもレジーナのポジションは重要な要素となりえるのだが、ここではそれは置いといて、レジーナのキャラ造形がいかに「どっちつかず」かを見ていくことにしてみたい。レジーナは敵でも見方でもないのだ。このインタヴューからすると、それは衣装にも表れているのだと考えることもできる。そこで同誌に載っているキャラデザインを見てみて、レジーナとプリキュアたちとの共通点を調べてみることにしたい。まず他のプリキュアたちの衣装の共通する特徴を見てみよう。

 

①髪のロール。全員が変身後髪が伸び、ぜんまい型に毛先を巻いている。エースは若干分かりにくいが、変身前と比べて髪型が丸みを帯びているようなので同じ傾向とみなしてよかろう。ぷにぷに感やフワフワ感を出すためらしい。

②花弁のモティーフ。スカートや袖等に注目すると、合弁花のごとく身体のまわりをまとっているように見える。またハートのこめかみや腰のリボンは桜の花びらに見え、ハート、ソードのシュシュ、ダイヤのカチューシャも合弁花の形をしている。ロゼッタは具体的に花の形をしており(何の花かはよく分からない。ダリアが近いかもしれない)、エースは…ない?代わりに他の4人にはない蝶型があるけれど…

③ハート型。4人が左胸(心臓の位置)に、エースが胸中央と頭部のリボンにハートの飾りをあしらえている。キュアハートは勿論それだけでなく、手足にもそれぞれ飾りを、またリボンもよく見るとハートの意匠がある。イヤリングもそう。

④トランプ柄。名前の元ネタなんだから当然入ってるはずなのだが、意外と押しが少ない。キュアハートは前述の通りだが、エース除くほか三人はイヤリングと頭部にあしらえている程度。エースはイヤリングはよく分からず、例の化粧道具(ラブアイズパレット)入れるバッグにあしらえられているのが分かる。でもそれだけ。アニメだとトランプ柄やたら見かける気がするけど、多分ポージングのせいだ。

⑤リボン。全員ウェストあたりに大きなリボンがある。エースは後ろにまわし、また前述のとおり頭部にも蝶リボンがある。ロゼッタ・ソードは腕飾りにつけ、ロゼッタだけはブーツにもあしらえている。

⑥ヒール。ロゼッタ除いて総じて高めのヒールをしている。ロゼッタはバンクでも分かりやすいと思うが、若干低め。低身長に合わせたためか(そもそもヒールは全長高くするためにあるはずだけれど。)以前だとヒールは女性の身体的自由を拘束するとしてやたらとリブなんかでバッシングされていたけれど、現在はどうなんだろ。てか、あれで運動できんのかな…?

⑦チョーカー。分かりにくいけれどみんなこれつけてるのは意外だった。

⑧全体的に服に白色の要素がある。

 

 …かなり長くなったが、概して8つの特徴が挙げられると思う。あとみんなかわいい。ではレジーナの衣装について見てみるとする。

 概評としてはこんな感じ

 ①× ②◎ ③△ ④× ⑤◎ ⑥◎ ⑦◎ ⑧×

 こうして見てみると案外高橋氏のいう通り共通点をかなり見て取ることができる。服は全面的に合弁花をあしらえているし、ヒールもチョーカーもある。リボンはいわずもがな。ハート型も飾りはないものの、リボンがしっかりかわいいハート型に結んである(一応そのへん意識しているようだ)。悪堕ちしてリボンの色が赤から紫になったのは、プシュケーが黒く染まるシーンをそのまま服装に表象しているように考えることができるだろう。

 ないものを見ていこう。④がないのは当然だが、①⑧がないのは大きい。プリキュアたちは愛の象徴としてデザインからも抱擁感を感じさせる。レジーナにはそれがない。変身前のマナと似て若干髪が外はねだが、それは子供らしい外部への興味、または悪意か。そしてレジーナには白色の部分が存在しない。あるのは白と対照的な特徴的な黒。多分これがプリキュアと隔てる要因となっているのだろうか。

 総じて見ると、一見異質などす黒いゴスロリ的デザインに見えて、実はプリキュアたちと相当共通点をもたせていることが分かる。基本的にプリキュアたちは変身によりヒールや飾り等、派手な要素を身につけるのであるが、レジーナにはそれが最初から備わっているのである(まあそのままの姿で戦うからというのもあるけれど)。相違点もハートが少ないとかトランプ柄がないとか些細なもので、髪もキャラの個性としては丸よりも現状のほうがふさわしい気もするし、必要要素に思える。こうして見てみるとレジーナは衣装的にも「悪堕ちしたプリキュア」の要素を存分にあしらえていることが分かる。それが何を展開的に意味するのかは、今後の展開に任せるとして、キャラクターのコードとしては、プリキュアの装飾をもち主人公に愛されながらも、敵将の娘というアイデンティティをひっさげて敵対するという、なんとも奇妙な構図を隠し持っていて、それがとても興味深いのである。

百合とは何か:恋愛ラボの事例より

 恋愛ラボでとうとう男が登場しました。男女のリコとは対照的に女の子みたいで、しかも5年前に振られたナギと、性格悪いけどマキの前だと何故か天然ジゴロになってしまうヤンです。原作見てたときは「おっ、ついに男か、しかもフラグまで立ててる!」とニヤニヤしながら読んでいたのですが、一部の百合厨にとってはこの展開は処刑ものだったようで。単にラブコメ展開に入っただけなのに、なんで拒絶反応が起こるのかな、他のラブコメに対しては特に文句はないではないか、と思うのですが、恋愛ラボに関しては、以下の理由によりガチ百合であると誤解されていた節があるようです(随所で言われているようにタイトルからして気づけといいたいところですが)。

・男が最初から登場しない(原作では2巻から、アニメでは6話から登場)

・藤女の雰囲気が百合的(生徒がリコ、マキにラブ)

・制作会社(ゆるゆり作ってる)

 もっとも個人的には男が登場するからといって恋愛ラボから百合的要素が喪失されるとは思っていません;それは極論です。今後の展開においても女同士の友情は依然ないがしろにされることはなく、むしろストーリーにおいても正直恋愛そのものより力点が置かれます。つまり、恋愛成就という目的を果たすために、友人の助けを借りたり、共同して何かするというパターンが多く見られます;それはまさしく、男のためでありながら男が存在しない、ホモ的(同性的)世界観といってもよいものです。また逆に、友情という目的のために一時的に男の方から助言なり箴言なりが来ることがあります;それも相当重要なファクターとして機能します。抽象的に考えると、物語的に目的と介在という2つのカテゴリーが存在するのですが、この2つは切り離すことができないものであり、それでいてそれぞれの領域において異性が混じり合うことはなく、ホモ的要素とヘテロ的要素がそれぞれ上手く機能する、という構造が時折見られます(もっとも、友人関係において同性の助言を受けることもあるし、この構造はあくまで全体の一部にすぎないのですが)

 このように、ヘテロ的恋愛の展開においても、百合が失われることはない。この場合の百合とは、明らかに恋愛とは言えないものですが、それでいて単なる友情、馴れ合いをも超越します。友人の恋愛のために応援・奮起し、逆に助けられもする。男の介在を受けることにより益々同性同士の関係を深めたりする。我々がフィクションの中で追い求める、清清しい関係。これに名前をつけるしたら、馴れ合いのように軽いものでも、友情のように馴れ合いの一歩手前のようなものでもなく、「百合」以外に思い当たらない。

 もちろんここで定義の撹乱みたいなものが起こっています:百合から恋愛要素が除去されてしまっている。でもこれって恋愛ラボに限ったことじゃあなく、他の作品にも当てはまることに思えるのですが、どうでしょう。

今後のテーマ

恋愛ラボにおける男子の登場のタイミングの必然性について

 アニメ放映されてからやたらと百合厨が「百合じゃないのになんで最初から男を出さないんだ」とか騒いでますが(恋愛ラボ原作において恋愛対象になる男子は2巻から登場します)、この登場のタイミングの遅れにはそれなりに意味があるというのが僕の見解です。アニメで実際登場してから本格的に書いてみようと思います。

 

他にも百合キュア、FREEなど、分析し甲斐がありそうです。

うむ…

Twitter だと文字制限あるしなかなか伸び伸びと書けないのでブログ初めました。

 

とりあえずアニメ見た後に構造分析とかやります。

 

今期はFREE!、銀の匙、恋愛ラボ、鯖、有頂天家族、ドキキュアあたりを分析していきたい。

 

中途半端な理解に基づくいい加減な分析になりそうな気がしますが、そこは勘弁で…