錬金術師の隠れ家

書評など。キーワード:フランス科学認識論、百合、鬼頭明里 https://twitter.com/phanomenologist

2022-01-01から1年間の記事一覧

錦木千束には「外」がないー『リコリス・リコイル』の物語上の致命的な欠陥について

2022年の7月から9月にかけて放送されたアニメ『リコリス・リコイル』は少女がガンアクションを行うというもはやありふれた設定ではあるものの、銃描写の精緻さや主人公バディの親密になっていく描写、そして主人公の寿命をめぐる視聴者の精神を揺れ動かす…

ジャン=ジャック・ヴュナンビュルジェ、川那部和恵訳『イマジネール』(2008,2020;邦訳 2022)

ガストン・バシュラールの想像力論に感銘を受けて、「想像力」の哲学を現代日本文化に適用した著作がないか探したことがある。そこで気づいたことなのだが、「想像力」と題しているのに「想像力」についての理論的検討が見られない著作が数多く見受けられる…

漫画評:茶番の皮を被った英雄譚。伊藤いづも『まちカドまぞく』(2014〜)

まちカドまぞく 1巻 (まんがタイムKRコミックス) 作者:伊藤いづも 芳文社 Amazon 本作は一見すると、『天体戦士サンレッド』(2005〜2015)のような「なんちゃって勧善懲悪もの」(論者の造語)のようにみえる。『天体戦士サンレッド』は正義のヒーローが悪…